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映画やマンガを中心に、好きなものだけチョイス。下手甘イラスト付きレビューです。『笑いと元気』が合い言葉。
ブーリン家の姉妹
2008年10月30日 (木) | 編集 |
今日は、語学や芸術にも造詣が深く、体格も立派ならスポーツ万能、歴代英国王きってのすっごいハンサム......というヘンリー8世を描いてみました。

ブーリ821.jpg

資料、探したのですが、こんな感じの肖像画しかありませんでした...。最初の結婚をした頃(18歳)のヘンリー8世は、まさに白馬の王子様だったようですが...。

16世紀、英国王ヘンリー8世の寵愛を巡るブーリン家の姉妹のドラマティックな愛憎劇。男子の世継ぎに恵まれない王に、一族の繁栄の為、娘アンを差し出そうと目論むブーリン家の父と叔父のノーフォーク公。しかし、絶対王政の我が儘な王が惹かれたのは、気だての優しい絶対可憐の妹メアリーだった。自尊心の強いアンは、メアリーに嫉妬し復讐するかのように、王の歓心を得ようと策略をめぐらす。

ご存知"ヘンリー8世と6人の妻"の中から、一番英国を変えた2番目の妻アン・ブーリンを焦点にした物語。"ヘンリー8世"は、シェークスピアはじめ、あまたの小説、戯曲、映画になっているので結末は分かってるものとして、今回はネタバレ(ん、いつもネタバレ同然か...)

ベストセラー小説『The Other Boleyn』の映画化。
アンと愛人だったメアリーというブーリン姉妹からの視点で描いてあるのが、新鮮。

ナタリー・ポートマンが、野心があり勝気なアンによく似合ってます。
実際のアンは、黒に近い暗褐色の髪と眼の地味な女性だったそうで、華やかな外見(ブロンド、碧眼)のメアリーにコンプレックスもあったのではないでしょうか。

王の寵愛を妹のメアリーに奪われ、仲の良かった姉妹だったのに、嫉妬し反目していく気位の高いアン。フランスから戻って以来、思わせぶりの会話や行動で自分の魅力を最大限に見せ、王をじらしにじらし、そして大胆にも王妃の座さえも得ようと策を労する。

抜け目がなく頭が良いけど結果愚かな女を『宮廷画家ゴヤは見た』に続く演技力で、ナタリーが見せてくれ、驚きです。ここんとこ、注目の女優さんです。

ナタリー・ポートマンも単体で見ると硬質な美しさ!なのですが、スカーレット・ヨハンソンが登場すると、露出が少ないラブシーンでも官能的な匂いを帯び、さすがに女らしい美しさであります。
ヘンリー8世も肖像画で見る限り "ポール・ジアマッティ"でもいいんじゃあるまいか?!と思うのですが、エリック・バナが演じていて、そこはかとなくセクシー(ちょっとズルい。もっと酷い男でしょ)

弟ジョージ(『ラスベガスをぶっつぶせ』のジム・スタージェスが無難に演じている)に、一時的に錯乱したアンから迫る...そしてそれを彼の妻が目撃という形も、ストーリー上の流れから"なるほどな"とすんなり受け入れられる脚本でした。


ブーリ820.jpg映画などで知る...今も微妙に残るイングランドの階級制度、昔はもっとであっただろう。地位や経済力を持っている相手との政略結婚は、娘も息子でさえも一族の出世のために使われ、今よりもっと切実なものだったろう。
メアリーのような平凡な愛のほうを選ぶ気持ちのあり方は、この時代にあっては珍しいことだと言えるかも知れません。
アンの失脚後、軒並み、一族が粛正されたのに、平民と結婚したメアリーが難を逃れたのは、不幸中の幸いでほっとするものでした。

最後、メアリーの静かな怒りが伝わってきます。


史実では、メアリーは姉?ジョージは兄では?となっています。
そして、アンの"反逆罪"も、ありもしない姦通や暗殺など王が謀った、と言われ、しかも最初の妻のキャサリンと違って人望がなく、アンは周囲の貴族にも民衆にも支持されてなく、迷わず『有罪』を宣告され、処刑。結婚してから1000日目...。

ナタリー・ポートマン、スカーレット・ヨハンソン、エリック・バナ、この3人とも、時代物が似合うキャスティング。現代劇より魅力的に見えます。

2人の女優の激しいせりふのやり取りと美しさを、堪能しました。

歴史的に政治的に大きく捉えた、というより、ブーリン姉妹の愛の行方と女として人としての生き方をミクロに描いた作品でした。

華麗で残酷な愛が渦巻く宮廷劇でも、ありました。


ちなみに、役に立たない暮らしの一分メモですが...

ヘンリー8世没後は...
    ↓
エドワード6世...3番目の妻ジェーン・シーモアが生んだが、12日後に産褥死("アンのたたり"と言われた)跡を継ぐも、父の荒淫による先天性梅毒のため15歳で死去。
年若く体が弱かったため、傀儡政権だった。当然、次の後継者で揉めたのち...
    ↓
メアリー1世...最初の妻、キャサリン・オブ・アラゴンの娘。スペインから嫁いだ母にならい、熱心なカトリック信者だった。プロテスタントを厳しく弾圧し処刑したため『Bloody Mary』"血なまぐさいメアリー"と言われた。ウオッカをトマトジュースで割ったブラッディーマリーはここから由来している。
終生、エリザベス親子を憎んだ。
    ↓
エリザベス1世...2番目の妻、アン・ブーリンの娘。イギリス国教会の立場を守りながらも、カトリックを弾圧せず、どちらの立場からも支持された。外交手腕にも優れ、国内は安定し繁栄した。
ケイト・ブランシェットの『エリザベス』『エリザベス・ゴールデンエイジ』が参考に。

先のエドワード6世とメアリー1世の頃、イングランド国内は荒れに荒れ暗黒の時代であった事を思うと、このエリザベス1世の治世は稀有な事だと思います!

"バージン・クィーン"と言われ、生涯独身であったのは、姻戚関係が政治的に絡むのを嫌ったのかもしれませんが『青髭王』と言われた父の所業が影響したのでは?ないでしょうか...。

アン・ブーリンとの結婚で、カトリックからイギリス国教会に変わり、アン・ブーリンの娘のエリザベス1世が英国の繁栄をもたらした...まさに、イングランドの歴史を変えた出来事だったといえます。

ロンドン塔にあるヘンリー8世の鎧のプロテクターを見ると、その大きさゆえに絶倫だったとか。残虐で色を好む王であったようですが、女を口説き落とすまでは夢中、寝ると醒める。体は愛しても、心は愛さない。どう考えても、情をかわした女を殺して、次...というヘンリ-8世にはぞっとしてしまいます。56歳でリューマチか梅毒で(梅毒でしょ)病死。(エリザベス1世は70歳まで生きた)

映画チラシの裏にあったコピーは...
『2人が愛したのは"1人の男" 愛は分けられない』

ヘンリー8世のキャッチコピーとしては...
『6人とその他大勢が愛したのは"1人の男" でも、この男、愛を分けるつもりはない』


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おまけ......


ヘンリー8世は、側近も容赦なく殺した。

彼の離婚とカトリックからの離脱に、

あくまで反対する大法官トマス・モア。

トマス・モアの最期の言葉が泣かせる...。





無実の姦通をやり玉に、

最後は反逆罪で処刑されるアン。

王の愛を受け、結婚してから1000日。

エリザベス1世を生んだその母の悲劇的な物語。

『ブーリン家の姉妹』と少しテイストが違うので、

見較べるのも面白い。

高っ(苦笑)ビデオのみ。(DVDは出てない?)

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センター・オブ・ジ・アース
2008年10月26日 (日) | 編集 |
今日のイラストは、いつもにましてゴチャゴチャですっ!(人、大杉)

センタ819.jpg

あの~、これ、生きてないと思う(笑)
すごーく落っこちているし、すご~く熱いはずだし(笑)


と、リアルに考えるのはよして『センター オブ ジ アース』というと『ふ~ん...』だけどジュール・ヴェルヌの『地底探検』だと思うと、ドキドキする。あと、学研の"鉱物セット"とか集めていた人には...鉱物の名前とか出てきて、何だか嬉しくなる。

文字通りのジェットコースト・ムービー。

エリック・ブレヴィグ監督は、ディズニーランドの3Dシアター『キャプテンEO』や『ミクロ アドベンチャー』を手掛けた人でもあるし、ディズニーシーのアトラクションに『センター・オブ・ジ・アース』そのものがあるワケで。アレにストーリーがついてると思えば、家族みんなで面白いかも。この時点で、まともな批評は止めて、楽しもうか...というゆるゆるモードの管理人です、許してください(笑)まぁ、私のは、いつもまともな批評なんかじゃなく、ただの感想ですけどね、はは。

例のごとく、うっかり"日本語吹き替え版"を観てしまった!しかも、もちろん3Dじゃなく2Dなのよ~。せっかくのデザートに、仕上げの砂糖のコーティングしてもらわなかったような気分(泣く)あっ、沢村一樹と矢口真理、そんなに違和感無かったのが救いかな。

飛びピラニアも人喰い植物も恐竜も、画面中央でタメて見栄を切ってくれたりするんだけど、2Dで観ている私には映像の流れを止めて、ちょっとおマヌケに見えたりする...はは、まぁ、愛嬌、愛嬌。EDも、3Dメガネをかけていたら楽しいだろうな的作りになっていた。
多分、ここは飛び出すトコだろ、と脳内変換しつつ鑑賞しましたデス(苦笑)


センタ818.jpgトレバー役のブレンダン・フレイザーは、顔の幅そのままの太い首とそれに負けないゴツい体躯を持っていて、地質学者とは思えぬマッチョさ。
『ハムナプトラ』から、この人は"冒険家"と言っていい。"野外調査"は、実はお手のもののはずである。

ハンナ(アニタ・ブリエム)は、足手まといにならないばかりか、有能な使える山岳ガイドだった。元気なねえちゃん、私は好きである。

ショーン役のジョシュ・ハッチャーソン...『テラビシアにかける橋』で観て以来。
暗い瞳を持つ男の子である。このハッチャンには萌えるものを感じないので、何とも言えないが、頑張ってください...。

この映画は、完全オトナ向けとは思わず、ファミリー向け、しかも息子連れだと楽しい!と思って観るべし。で、観た後、ディズニーシーの『センター オブ ジ アース』に乗りたくなりますね^^


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ゲットスマート
2008年10月20日 (月) | 編集 |
007もこんなにダンスが上手くない?!(その前に、007はデブとは踊らない...)

スパイ815.jpg
イラスト、描きながら...やっぱ、ボンドやゴルゴ(細かく言うとスパイじゃなくスナイパー)はカッコいい!!なんかスマート、どうでもよくなってきて(笑)なので、今日はショートカットのレビューです。

60年代に人気だったTVシリーズ『それ行けスマート』の映画化。
凶悪な犯罪組織『カオス』と闘う秘密諜報機関『コントロール』。本部が襲われ、全工作員の顔が割れてしまったため、最後の切り札(笑)として分析官スマートが急遽エージェントに抜擢される事に...。


赤いスポーツカーに美女、タキシード、ワケのわからないスパイ用メカグッズ、とにかく世界制覇を目論む悪の組織...等々、うっとりするほどカッコいい本格スパイ物の、パロディ映画。こちらは、うっとりしないけど楽しめます。前半のほうが、特に笑えるかな。

終始ニコリともしない生真面目な表情のスティーブ・カレルが、笑わせてくれます。


スパイ816.jpg贅沢なのか?無駄なのか?どっちなのか分からない配役も、笑わせます。

諜報機関の上司はアラン・アーキン。『リトル ミス サンシャイン』の下ネタ大好きなお祖父ちゃん。あ~そういえば、スティーブ・カレルも『リトルーー』のゲイの叔父さんだった(笑)

犯罪組織のボスはテレンス・スタンプ。ついこの間は『ウォンテッド』に出ていた。

ノーテンキな大統領はジェームズ・カーン。

淋しがりやの木の男(笑)は『ゴースト・バスターズ』のビル・マーレイ?

マシ・オカさん、秘密兵器開発担当のメカオタク役。声、高いのね。

最新スパイグッズも上手く使いこなせないスマート(スティーブ・カレル)ですが、意外と身体能力が優れていて、驚き!デブ嬢をリフトしたりダンスもお見事!(笑)まぁ、かなり、エージェント99(アン・ハサウェイ)に助けられていますが。
アン・ハサウェイは、スパイ映画につきもののゴージャスな美女(まあまあの露出w)で、コメディエンヌとしても頑張っておりました。
おー、アクションシーンも、意外とマジだったデス(笑)


パッっと楽しめ、パっと忘れられる後を引かない娯楽作品。
劇場鑑賞もよいですが、家族みんなで楽しめ、えへらえへら笑いながら弛緩して観たいので、DVDでもいいかも知れないデス。



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私がクマにキレた理由
2008年10月17日 (金) | 編集 |
これがホントの『家政婦は見た』なのだー!

クマ813.jpg

アニー(スカーレット・ヨハンソン)は、結構、優秀な成績で大学を卒業したのに、就活の面接にメゲてしまう。『う~ん、私って何がしたいの?』と考え込み、立ち止まる日々。そんな時、アニーはナニー(プロのベビーシッター)と間違えられる。
ニューヨークのセレブな暮らしが味わえるのもいいか、とナニーの仕事を引き受ける事になる...。


全米ベストセラー小説『ティファニーで子育てを』の映画化。
邦題は『私がクマにキレた理由』なるほど!最後に分かる仕掛けです。

セレブなミセスX(ローラ・リニー)は、家庭を顧みない夫へのやつ当たりもあり『ナニー!ナニー!』と24時間こき使い、ひと晩も子供を見れないほど、忙しい。えっーー?日本ではせいぜい子育てのアウトソーシングは、実家の母に押し付けるぐらいです(笑)
『松・竹・梅』でいうと『梅』の暮らしをしている私(涙)には、NYのマンハッタンに住む上流社会の子育て事情はとんと分からないけど、本当にこんな感じなんでしょうか?う~む、酷いっ!

ミスタXは、なんと!ポール・ジアマッティなんです。『幻影師アイゼンハイム』に出ていた印象深い役者さん。最初は、顔が見えないんです。
で、ジアマッティさんの良さも、全然見えない役なんですよ~(笑)
その子犬どうすんだーよー!ラブラドールの可愛い子犬!もう、全くぅ!
ハゲでデブで "人の顔は見ないがお尻は見る"肉食動物って事が、よく分かる役づくりでした、たはは。

アニーの"お仕事探し"と"自分探し"の体験記。NYの上流家庭という未知の世界を現地学習するアニー。少しは経験値が上がったかな。

"自分探し"ながら、ついでに"ママというもの”も再発見。
最後にアニーのママ(庶民派ナース)がカッコよく見えたし。
あんなに面倒見ないセレブママでも、幼い息子はママを慕うのね...。

どんな立場から見ても『ママは有り難し』の存在なワケで...。しみじみ。



クマ814.jpg就活の人におススメ!と言いたいところだが、そこまでシビアな作りでなくて...。

なんとなくモラトリアムでいたくて...院に進もうか、卒業してハードな業界に行ってサクセス街道まっしぐら!つ~のも何か違う、面接には凹んだし、とりあえずNYのセレブ社会のナニーという異文化を体験してみるかな...あ、いい彼も欲しいな、うん...みたいな。(文がたらたら長いのは、アニーがそれだけ迷い中~ってフンイキを出したw)

『私は何がしたいの?』『私の人生これでいいの?』『この先、どうなるの?』...と、まだ、ちょっとフラフラして不安な、フワ~と迷っている人に贈るガールズ・ムービーです。


アニーの専攻だった『文化人類学』を活かして『国立自然博物館』(映画『ナイトミュージアム』でもおなじみ)の展示物よろしく、NYの街角にいる女性を研究観察するというアイデアと、テンポの良い脚本でなかなか見せてくれ、可愛い小品となっています。まっ、決定的なパンチ力はやや弱いので、DVDでもOK!かな。


本来 "おやじキラー"であるスカちゃんがセクシーさを抑え、キュートな魅力が出ているコメディでした^^


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おや、この2人の著者エマ・マクローリンとニコラ・クラウスは、元ナニーだそうです。
セレブ家庭の子育て事情って、どうやらマジでこんなもんらしいデス?!
ミセスXの、ナニーに対する無理難題な注文と、贅沢三昧の暮らしぶりに、ため息が出そうですね...。NY好きでセレブの生活を覗き見したい人には、面白いかも。
原書も簡単な英語だそうで、チャレンジしてみるのも良いでしょう。いや、私はしませんが(笑)



宮廷画家ゴヤは見た
2008年10月12日 (日) | 編集 |
↓『まわりの役者を食らうハビエル・バルデム』paint by 気ムラ屋あん。
ゴヤ810.jpg
宮廷画家ゴヤが描いた2枚の肖像画、美少女イネス(ナタリー・ポートマン)と神父ロレンソ(ハビエル・バルデム)
この2人の数奇な運命を、ゴヤは見つめ続ける事になる...。


私の中で、ゴヤはもっと古い時代に活躍した画家だというイメージがあって(単なる無知だが)フランス革命(1789年)の頃と重なっていたとは知らなかった...。(この物語は、1792年、カルロス4世在位のスペインを舞台に始まる。翌1793年には、フランスではルイ16世とマリー・アントワネットが処刑される)その後のナポレオン率いるフランス軍に占領され、イベリア半島戦争も続き、スペインは動乱の時代だったんですね。(ん~、世界史の勉強になる~)
この時代を描いたフランス映画は沢山あれども、スペイン映画は、それこそペネロペ・クルスの『裸のマハ』ぐらいで(←ただ動乱は描いてない)あまり無いような気がします。それだけにスペイン宮廷の様子や、スペインから描いた侵攻など、興味深いものがありました。

『異端審問』ショッキングでした!
カトリック以外のものを異端視して、拷問し"告白"させ、拘束もしくは処刑するというもの。中世の異教徒廃絶の宗教観、苛烈ですね。
ゴヤが気に入って絵のモデルにしていた美少女イネス(ナタリー・ポートマン)がいわれなき嫌疑を受け拘束される、という不条理さ。拷問シーンは僅かでさっとした描写ながら、ナタリー・ポートマンが凄まじい変貌ぶりを見せ、その残酷な処遇がよく分かります。彼女の品のある顔立ちは古典劇によく似合いますが、前半の美貌から後半の襤褸雑巾のようになるまでが、衝撃的です。


さて、映画と違って、私が考える実際のゴヤ像......
ゴヤ812.jpg不細工に描いて、王妃の不興を買ったというこの騎乗肖像画のエピソードからも分かるように、ゴヤ自身は観たままをそのまま描く鋭い観察力も自由さも持ち合わせている...。そして、女神となる女性は美しく魅力的に描いた...。
宮廷画家として上手くやりながらも、一方で戦争を描いた銅版画や晩年の"黒い絵"シリーズの代表作『我が子を食らうサトゥルヌス』など暗くて怖い絵をみると、ゴヤはなかなかどうして我も個性も強い人間だった、と私は思います。

しかし、映画のゴヤは芸術家の奔放さはなく実務家のように地味で、ひたすら観察者であります。

ナタリー・ポートマンも驚く演技なのですが、やはり語るべきはロレンソ神父役のハビエル・バルデム!『宮廷画家ゴヤは見た』という題名さながら、ゴヤは狂言回しの役どころで、視線はどうしてもロレンソ神父(ハビエル・バルデム)にいってしまう。ロレンソ神父はスペイン教会に忠実で異教徒廃絶の先頭に立ちながら、イネスの家族に『娘を返せ』と締め上げられたら、すぐ音をあげる脆弱さ。エロ神父。
価値観が変動する時代とはいえ開き直った変節漢ぶり。権力を持つ人間の傲慢さや弱さを嫌らしく演じるハビエル・バルデムは、目が離せない。う~む上手いです。

最後のシーンでの、彼の表情をとくとご覧いただきたい。(『ノーカントリー』でも、男を絞め殺す時に凄い表情していたけど)う~む、ハビエルさん、やりたい放題である。ここまでヤってみせてると、本人、楽しいんじゃあるまいか(笑)


『イースタン・プロミス』のヴィゴ・モーテンセンを "見たい、見ちゃいけない、見たい、見ちゃいけない、あ、見たい"とするならば......。
『宮廷画家ゴヤは見た』のハビエル・バルデムは "見たくない、見てしまう、見たくない、見たくない、うっ、見てしまった”といったところ。

なんというどろりとした存在感。ハビエル・バルデム酔い(ほろ酔いどころか、泥酔w)してしまうほど。『濃い~!』という言葉は、彼に捧げよう(笑)


ゴヤ811.jpg最後は描き方によっては悲劇的なはずなのに、荷車の周りを子供が歌いはやし、妙な乾いたユーモアとペーソス感があり、イネスをとぼとぼと追うゴヤは、ミューズを永遠に追い続ける業を抱いた画家の姿に見えたのでありました...。

ミロス・フォアマン監督の過去の2作品は、とてもよく覚えています。
『カッコーの巣の上で』は、あの揺れるような音楽とジャック・ニコルソンが演じた人物の結末が、衝撃的だったし。
『アマデウス』は天才と凡才の確執と嫉妬が絡む人間描写が、凄く新鮮だった。
パンクっぽい軽薄そうな(これだけでもビックリ)モーツァルトがサリエリの曲をさらっと編曲して見事な演奏をしてみせるところとか。

今よりずっと感性が摩耗してない時期に観たので、この2作品は印象深い。
えーっと、それに比べると、この作品は私の中ではややインパクトに弱い...。
が、それでも、なかなか見応えがある秀作だった、と思います。

この映画は、ゴヤの絵も製作過程も堪能できるし!この時代のスペインはゴヤの絵のように暗めで美しく哀しい、と思いました。


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容疑者Xの献身
2008年10月06日 (月) | 編集 |
物理学者が友を想う時、数学者は恋をする。

ガリ808.jpg
帝都大学理工学部物理学科の准教授、湯川学(福山雅治)が、今度の事件に興味を持ったのは、容疑者(松雪泰子)が儚げで色っぽい美人だった事と容疑者の隣人が旧友だったから。

私は『チームバチスタの栄光』の映画(原作は好き)より、こっちのほうがずっと楽しめ面白かった。多分、一番大きいのは鑑賞前に『容疑者Xの献身』の原作を読まなかった事が、大きい。(『探偵ガリレオ』『予知夢』は読んだ)

ミステリー映画は、原作を読まないのに限る!これ大事(笑)

今回は、特に、結末は二転三転する。犯人も死体隠匿を手伝った者も最初に判っている、というのに。ホントのホントの事実が解明されていく時、私は原作をまだ読んでなくて良かった!と、つくづく思った。(現在は読了)

それに『チームバチスタ』の主人公は、出世街道から降り、さりとて世捨て人にもなれない物思う事が多い何とも魅力的な男だったのに、ただの癒し系のほんわりした女になってるし。

こちらの物理学者『ガリレオ』に絡むのは、刑事の草薙俊平(北村一輝)じゃなく内海薫(柴咲コウ)だが、要らないと思いつつ、まっワトソン君的役回りだしいいか...とTVドラマで観ているうちに諦めがつく(笑)
TVドラマで馴染んだ面々...助手の栗林さん(渡辺いっけい)や監察医の城之内桜子(真矢みき)刑事の弓削(品川祐)にも、会えて嬉しい。

土曜のTVドラマ『ガリレオ・エピソードゼロ』では、若き日の湯川と草薙はピカピカの三浦春馬と佐野和真なのに、栗林さん(渡辺いっけい)はそのまま(髪だけヤングw)出て来るのが笑えた。この『エピソードゼロ』も、何故、物理学者が刑事の捜査に協力するようになったのか?繋がりが分かって、興味深い。もちろん、石神も出て来て、映画の序章となっている。

ガリ809.jpg『この証明は美しくない』と言って、4色問題を一心不乱に解いていた大学時代の石神。純粋だが、生き方が不器用で数学以外に関心が無い。

その石神が数学の美しさ以外の "美しさ"に、彼は初めて気づく。

"恋"というより"生きる希望"をもらった石神は、愛する者のために無償の愛を捧げる。
その一方で、明晰な頭脳で計画した冷徹な犯行もやってのける。

石神が計算し尽くした完全犯罪の方程式を、湯川は苦悩しながら解く。


彼の数学の才能や人柄を惜しみ、無念に思う湯川学。

天才物理学者VS天才数学者。
お互い本物と認め、自分を理解してくれる数少ない友達。

感情に流されない合理主義者の湯川学も、さすがに、この友を想う時、気持ちは揺れ動くのだった。

『この問題を解いても、誰も幸せにならない』と、石神は言った。

しかし、最後に花岡靖子が叫んだ時、少なくとも結末は美しかった...のかも知れない。


映画を観た後に、ぜひ原作をおススメしたい。

原作が小説である映画を、何度か観ている人は気づいていると思うが、かなり薄い本じゃないと映画のストーリーとしてうまく消化出来ない。案外、省略される部分が多い。

このミステリーは、最後の最後までトリックが判らないし、途中までこちらはひっかけ問題に騙される事になる。映画だと、なおさらである。

映画の中で、今ひとつ腑に落ちない事情は、原作のほうで丹念に追っている。

石神は大学院に進まなかった後、段階を経て高校教師になっているし、映画の日常ほど虚ろにやり過ごしていたわけではない。やる気の無い生徒に『何のために数学を勉強するのか?』『いったい何の役にたつのか?時間の無駄だろ?』(←私も高校時代ずーと思ってた)と質問されて、生徒の関心事に絡めて丁寧に説明したりする所もある。色んな経過を知るには、原作を読んでほしい。

そして、淡々とした筋運びなのに、なんと最後は慟哭の叫び!いきなり胸を掴まれる。

あぁ、この最後のために "石神役"は手練の役者を持ってこないといけなかったのだ。

ちなみに、原作では石神(堤真一)は醜い男で、工藤(ダンカン)は端正な顔をしている。

堤真一はこの間の『クライマーズハイ』も熱演で良かったんだけど、どうしても堺雅人の演技に目を奪われてしまって。それを横目で見ていた(見ていたのか?!)堤真一の今度の演技は、実に興味深い!と思う。

『手紙』もそうだけど、原作より映画のほうがウェット過ぎる...お~いおい。
福山雅治を見に行っただけなのに、石神の人生が物哀しくて、泣いてしまった。

湯川の友への気持ち、石神の愛する人を守ろうとする気持ち。
クールな湯川が揺れに揺れて、社会的な地位や立場を抜きにした理系男たちのピュアさ加減に、こちらも胸を揺すぶられる。

原作も良い!『容疑者Xの献身』...献身!ホント、題名どおりである。

追記:日本のガリレオ先生たち、ノーベル賞、おめでとうー!!ノーベル賞を獲るような本当の物理学者は、87歳だったり、髪がスゴい事になってたりするんだ、と妙に納得しました(笑)

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アイアンマン/Iron man
2008年10月01日 (水) | 編集 |
またもや、きみの名は、アメコミヒーローなるや。

蛇807.jpg

ここ数年、アメコミヒーローの映画、どのくらい観ただろうか?
さて今度のは、基本に立ち返り?!悩まず、考えずにぱぁーと、楽しむ映画です。


この映画のレビューは書くのも読むのも要らない、と思います��΂�
(ホントは、最近、文書けないんですよー、たはは)

先ずは、劇場で坐るのみっ!(笑)


蛇805.jpg私 "ロバート・ダウニー・Jr."知らないんです。
『ゾディアック』も観てないし。『ゴシカ』は観たけど、記憶無し...。

似顔絵、描きながら、えらい睫毛の濃いおっさんだなぁ~(多分、どこの毛も濃いんでしょうが)としか、思わなかったんですが(笑)

映画を観てるうちに、稚気のある役どころのせいか愛嬌ある表情がチャーミングでした。

『ダークナイト』のブルース・ウェインみたいにハムレット的苦悩はせず、派手で明るいキャラクターで、いかにもアメリカ人に受けそう。



あちこちに、アメコミの遊び心が散りばめてありました。

最後の決め技も『氷結防止はどうしたっ』と、適役の頭をゴン!と一発殴る!なんてプリミティブなんでしょう(笑)ガキ大将同士じゃないんですからっ!ハイテクのパワードスーツ同士とは思えません。『アイアンマン』の顔も、妙~にレトロですし。

この巨大軍事産業のCEOであるトニー・スターク、ギャンブルも酒も女も好きなんだけど、実は一番好きなのは機械いじり。自宅にこもって、せっせっとロボット作りに勤しむ様は、おじさんの姿をしていても "永遠の男の子"です。か・わ・い・い。


まぁ、これもつべこべ言わずに、くっくっと笑いながら『楽しむが勝ち』という作品です。オトナと男の子が同居してる人におススメ�΂��B


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